■s house

□concept/うねる厚い壁

ガラスや布、人間の皮膚、地球の大気圏など、それぞれスケールは異なるが、何らかの厚みを持っている。その厚みの中で様々な物理化学的処理がなされることで、「壁」として機能している。
この建築では、壁のあり方をテーマとした。

敷地は日本列島の中央構造帯に属する山系の山腹、標高約1,200Mのゆるい斜面に赤松が林立する別荘地。厳冬期には積雪と2桁の零下気温をコンスタントに記録する一方で、夏季は最高気温30度かつ3ヶ月の平均気温が16度前後という空気環境をあわせ持つ。このような避暑地特有の変化の大きい外部環境と内部空間の関係を、望まない時期には分断し、好ましい時期には連続する状態にしたい。
その解法として私たちがたどり着いたのは、厚みが変化する壁をうねらせることだった。

連続する帯状の壁は、ランダムに立つ赤松の木々をかわしつつ、隣地からの視線を避けて眺望を確保できるよう、適度に屈曲させて配置した。
キッチン・浴室・トイレ・階段室・各種収納などの諸機能は、壁の厚みの中に梱包した。水回り上の小部屋や階段上の収納部など、切実に必要とされる機能以外の部分もアクセス可能な空間にすることで、壁の厚みをほぼ無駄なく利用している。
その結果、うねる壁に抱き込まれたメインの居室と、寝室と水回りを緩衝する鉄平石敷きの半屋外空間を、雑多な要素がない文字通り「空」の空間として大きく確保できた。うねりによって包まれる部分は寝室とした。

角の出隅をなくし断熱効率を高めるために、壁の屈曲部は曲面とし、外部とつながる大開口部にはリン酸セルロースのダンボール状ボードをフラッシュ・スクリーンとして内側に設置することで、冷気遮断への対応としている。
このスクリーンは可視光線のうち赤偏方向を透過する傾向があり、午後の遠ざかる太陽光の赤みをより強調して空間に満たす。これが、時間をかけてこの別荘にたどり着く人々を出迎える、格好のしつらえとなった。当然このスクリーンも壁内に格納される。
主構造は、技術的にこなれ比較的安価にできる在来木造を用い、壁の厚みと屈曲した配置によって強度を出している。

春夏秋3シーズンの休日を日々の生活から離れて快適に過ごしたいというクライアントの要望に対しては、外部環境と連続できる大空間と、厚い壁に包まれた静寂と安心感というかたちで応えることができたのではないか。加えて、別荘建築としてオールシーズン使えるポテンシャルを確保している。
外壁の色を赤松林にとけ込むようにしたために、キツツキにも好まれてしまったのは困りものなのだが。

松野勉・相澤久美/ライフアンドシェルター社

ben matsuno, kumi aizawa / life + shelter co.,

2001.12.07

このテキストは新建築「住宅特集」2月号に掲載されたものです。

plan

photo by nacasa & pertners

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