■柔らかいMass

1969年、地球を外から見る視点に立った人類は、現在、素材を中から見る視点を獲得している。

最先端の素材開発者たちは、素材の中に入り込み、原子間の組成や分子構造、繊維の断面形状、微表面の構造などをデザインしているのだ。炭素原子がジオデシック構造になったフラーレンに代表されるナノテクノロジーの分野がその良い例だ。
このことは、私たちが<素材の中からの視点>をすでに獲得していることを示しているのではないか。素材というミクロな空間をデザインしていると言ってもいい。
このミクロな素材空間を、逆に私たちが日常的に接している空間に拡大してみたのが今回の試み。つまり、素材の組成をデザインするように人間空間の組成をデザインするのだ。

風にそよぐ柔らかい布を無数に吊るし、外部から見ると幾重もの布で空間が満たされた状態をつくる。この空間を外部から見ると一見密実なMassに見えるが、実際は、人のアクションによって空隙の形態や光の状態、音の状態が変化する<柔らかいMass>だ。
布を一定以上の密度で満たすことによって、人々のアクションやアクティビティを感じ取ることができる空間になるだろう。

この空間に立ち入った人々は、従来立ち入ることのできなかったMassの中に分け入る感覚と同時に、「空間化された素材をその内部から読みとる感覚」という、拡張された素材感を感じ取ることができるかもしれない。

松野勉・相澤久美/ライフアンドシェルター社

ben matsuno, kumi aizawa / life + shelter co.,

2001.10.25

※このテキストは30x100 material展に出展した際のテキストの原文です。

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