■内皮を持つメタル・シェルター
本敷地は都市整備公団の開発による、定期借地権が設定された土地である。この土地に定年後も植物と共に楽しく安心して生活が営める住まいを作りたい。外部環境に対しては強固なシェルターとしつつ、広い庭と一体となった「開けた住宅」としてほしい、というのがクライアントの要望であった。
私たちは、空間の境界を柔軟に設定することで「たまり」や「会話」といった家族間の交流を促すことができるのではないかと考えた。
建物のほぼ中央、1階レベルには木製引き戸を大きく設けてメインエントランスとし、庭と居間を直接つながる構成とした。住み手やゲストは、植物を愛するお施主様が植えた草花や樹木を眺めながら比較的長いアプローチを歩き、玄関という形式を経ることなく居間に迎えられる。居間の室内側にはモルタル敷きの踏み込みを設けている。
天井が高い居間には床暖房を設け、モルタル敷きとした。東に面して大きな開口を取っているため、日が低い冬期でも太陽光が射し込み、モルタルに蓄熱される。蓄熱された熱のせいか、竣工後の試験運転での床暖房の立ち上がりは木床と遜色ない結果が得られている。
また、居間の頂部には熱気抜きの換気窓と天井扇を設置した。
室内壁仕上げには主に珪藻土を用いた。部屋ごとに色や塗り方を変えることで、ストイックになりがちな現代住宅のインテリアを脱することを試みている。天井仕上げは古紙を再利用したペーパー・ハニカム・パネルを用いた。共に湿潤な日本の気候に対して、室内の調湿機能を期待したことによる。
一方、外部で建物全体を覆うシェルターは耐久性と交換性を重視し、ポルト接合の折版/ルーフデッキとした。頂部にはR加工を施し、地面から立ち上がった折版が緩やかに全体を包み込む形状を取った。この形状は室内にも反映され、天井高が2,000から4,300まで変化する居間や、柔らかい曲面形状の天井を持つ2Fの居室を作りだすことになった。外壁面には角波板を胴縁で浮かせて用い、波の隙間を通気層としている。
夏期の表面温度上昇対策として、金属折版の頂部には散水設備を設けている。現在は上水道を接続しているが、将来的には一枚屋根の形状を活かして雨水を集水し、トイレの洗浄や庭の散水利用とあわせて、雨水タンクを設置する計画である。
松野勉・相澤久美/ライフアンドシェルター社
ben matsuno, kumi aizawa / life + shelter co.,
2001.10